「柚子」って自分で育てられるって知っていますか?柚子の木は、地植えだけでなく、鉢植えで育てることもできます。「柚子」の鉢植えは、地植えと比べていろいろな点で育てやすく、初心者にもおすすめです。
「柚子」の高貴な香りは邪気を払い、黄色い実は子孫繁栄を意味する縁起のよい植物として古くから日本人に愛されてきました。爽やかな香りと酸味が特徴の「柚子」は、日本料理の風味づけに欠かせない柑橘類です。今回は、鉢植えを中心に「柚子」を自宅で育てる方法やお手入れ方法などを解説します。
「柚子」の育て方
学名:Citrus junos
歴史「柚子」
「柚子」の歴史は、中国長江(揚子江)上流域が原産地とされていて、日本には、奈良時代または飛鳥時代に渡来し、当時は薬用などの用途で栽培されていたといわれています。その後は、ほぼ日本全域で栽培されています。また冬至には、柚子湯に入る習慣があります。
「柚子」の香りは、精神をリラックスさせる効果があり、「柚子」の皮には、血行促進、疲労回復、美肌、保湿などの多くの効果があることから、このような習慣が日本に根付いたといわれています。
柚子(ゆず)=「融通がきく」、冬至=「湯治(とうじ)」。こうした語呂合せから、冬至の日に柚子湯に入ると言われていますが、もともとは「一陽来復」の運を呼びこむ前に、厄払いするための禊(みそぎ)だと考えられています。現代でも、新年や大切な儀式に際して入浴する風習があります。
準備するもの
柚子の種 | 木頭ゆず |
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柚子の苗 | 本柚子/花柚子 |
土 | 腐葉土・堆肥/赤玉土・腐葉土/市販の果樹用培養土など |
害虫対策 | 殺虫殺菌剤など |
おすすめの肥料 | 有機質肥料/液体肥料など |
あると便利なアイテム | 鉢/支柱/ひも/ロープ/園芸用ハサミなど |
柚子の種類
「柚子」は歴史が古く、それぞれの地域で多くの系統が存在していて、選抜・育成などにより「トゲなし」や「種なし」などもあります。「柚子」は5~6月頃に花を咲かせ、夏頃から晩秋、初冬にかけて収穫します。柑橘類の中でも「柚子」は耐寒性が強く、寒い地域でも育てやすく病気にも強いです。
【本柚子】
木頭ゆず | 果実が大玉で玉揃いがよく、果皮が厚く外観が美しく、色や香りの良い高品質なゆず。 |
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山根ゆず | 果実はやや小さいが、玉そろいが良く、豊産性「木頭ゆず」に比べて結実年齢に入るのが早く5年で本格的に結実。 |
多田錦 | 果実はやや小ぶりだが、種がなくトゲも少なく、栽培時から調理加工時まで扱いやすい品種として人気。 |
【花柚子】
一才ゆず | 果実が小さく、短期間で実ができる。 |
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常柚 | 果実が、50g前後と小さく皮は薄めで、本柚子に比べて香りがやや少ない。 |
・柚子の木の花は5月に開花し、5枚花弁で白色。
・開花するととてもよい香りがするのが特徴。
・秋になると柚子の木は果実をつける。
土のポイント
「柚子」は、水はけが良く保水性の良い土を選びましょう。
庭に地植えする場合 | 腐葉土や堆肥を混ぜておいてくとよい。 |
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プランターの場合 | 市販の果樹用の培養土でよいが、土を作る場合は、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜる。 |
種から植え付けるときのポイント
柚子の種をまく場合は「採り蒔き」にします。
①採取した種は水でよく洗い、周りのヌルヌルをきちんと落とすこと。(発芽を抑制する物質が含まれているため。)
②濡らしたキッチンペーパーでくるんで1~2日水を吸わせる。
③植木鉢に小玉の赤玉土を入れ、種の2倍程度の穴を開けて蒔く。
④土が乾かないようにしながら室内の暖かい場所に置く。
⑤発芽したら、日当たりの良い場所で管理する。
⑥10~20cmまで成長したら、1株ずつ植え替える。
柚子は種から育てると、実がつくような株に成長するまでに、とても長い期間を必要とします。実を早く収穫したいようなら、接ぎ木苗を購入して育てるのが現実的です。
ことわざ「桃栗三年柿八年」の続きがある?
続きには地域などによって、さまざまなパターンがあります。その一例としては、「梨の馬鹿目が十八年」「柚子は大馬鹿十八年」「林檎にこにこ二十五年」 「梅は酸い酸い十三年」など。ほかには銀杏やみかんが登場するものもありますよ。
苗から植え付けるときのポイント
販売されている柚子の苗は、ほとんどが「接ぎ木苗」です。接ぎ木苗とは、「普通の苗の一部を切って、そこに別の苗を繋ぎ合わせた苗のこと」をいいます。
台木 | もともと根のある苗。 |
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穂木 | 繋ぎ合わせた実のなる苗。 |
参孝:写真でわかる園芸用語集で理解を深めよう。
「良い苗の見分け方」
・接いだ部分が、目立たずしっかりとついているもの。
・幹が太くて皮がめくれておらず、枝の節が詰まって葉が多いもの。
こんな苗には要注意‼
・根との境付近や継いだ部分に傷がある。
・接いだ部分に隙間が残っている。
病気や害虫に悩まされる可能性があります。
「実付き苗の場合」
たくさん実がついているものは、株が疲れている可能性があり、植え付けた後に急に枯れてしまう可能性があります。葉に病害虫がなく、しっかりした株であれば実の少ない株を選びましょう。
地植えの場合 | ・接いだ部分が、土の上に出るようにして、根が飛び出さないように植える。 |
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鉢植えの場合 | ・接いだ部分が、土の上に出るようにして、根が飛び出さないように植える。 ・苗よりも、大きめの鉢に根を軽くほぐして、太い根があれば軽く切り、新しい根が出やすくなるようにしてから植える。 |
【植え替え】
地植えの場合 | 植え替えずにそのまま育てる。 |
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鉢植えの場合 | 根が詰まらないように、苗よりも大きめの鉢を準備して植え替える。 |
これで「柚子」を育てる準備は完璧です。
柚子の「お手入れ方法」
「柚子」は、香りがいいことや栄養価が高く、料理だけでなく化粧水や調味料などさまざまなことに使用されています。また、鉢植えにするとそれほど大きくならず、お部屋で育てても邪魔にならないので、観賞用としても人気の植物です。
【鉢に植え替えるとき】
全体の3㎝~5㎝程度の長さに根を切り、鉢に植え直す。
・根の形を整える。
・枝の高さも鉢の高さと同じくらいの高さに切っておく。
水やり
「柚子」は柑橘類の中でも強く、ある程度の乾燥にも耐えられますが、降水量の多い地域のほうが美味しい柚子ができるのでしっかりと水やりをしましょう。
地植えの場合 | 基本的に、降雨で十分なので水やりの必要はない。ただ夏場の雨があまり降らない時期は水やりをする。 |
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鉢植えの場合 | 土の表面が乾いたら、鉢の底から水が出てくるくらいにたっぷりと水やりをする。 |
栽培する場所
「柚子」は太陽の光を好みますので、日当たりのよい場所で育ててあげましょう。日当たりが良い方が花がよくつき、果実もたくさん実ります。
鉢植えでベランダで育てる場合は、日当たりが良く、エアコンの室外機の風が当たらない場所にしましょう。
追肥は年3回
【しっかり結実させるための肥料の施し方】
3月(1回目) | 油粕などの緩効性の有機質肥料を追肥する。 |
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6月(2回目) | 速効性のある化成肥料を与え、実を充実させる。 |
10月(3回目) | 速効性のある化成肥料を与え、実を充実させる。 |
肥料の与え過ぎにならないように、適切な量を追肥するように注意しましょう。
ひとくちに肥料といっても形や効き方など様々で、特徴によって分類することができます。例えば原料によって有機質肥料と無機質肥料に分ける場合、含まれる成分によって単肥と複合肥料に分ける場合、効き方によって速効性肥料、緩効性肥料、遅効性肥料に分ける場合などがあります。また肥料に関する法律(肥料取締法)においては普通肥料と特殊肥料といった分け方もあります。ここでは主な分類を紹介しますので、肥料を選ぶときの参考にしてください。
害虫対策
「柚子」は他の柑橘と異なり、病気には非常に強い耐性があります。柚子の木を育てるときに気を付ける害虫は、カイガラムシ類、アブラムシ類、カミキリムシ、エカキムシなどです。害虫がたくさんついてしまうと、葉や枝が食べられてしまうので、殺虫剤などを利用してましょう。
柚子の病気や害虫での困ったことやお悩みごと解決はこちら↓
剪定・誘引・摘果
「柚子」は「剪定・誘引・摘果」と時期に合わせたそれぞれのお手入れが必要になります。
・剪定
【柚子の木の剪定の適期】「3~4月」
植え付け後~数年 | 密集する枝を間引く程度の剪定をする。 |
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植え付け~5年ぐらい | 伸びた枝の剪定をする。 |
・誘引
植え付けから2~3年が経ち、柚子の木の枝が成長したら、誘引する作業を行います。3月までに行い、邪魔な枝は切りとりましょう。
地植えの場合 | ロープなどを使って枝を横方向に誘引する。 |
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鉢植えの場合 | 支柱などを使って誘引する。 |
・摘果
【柚子の木の摘果時期】「7月~10月」
「生理落果」…実がなっても、ある程度自然に実が落ちてしまう現象のこと。
植え付けから2年まで | 株自体が成長する方に栄養を回すため、実がなったら未成熟の青柚子をすべて摘果する。 |
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3年目以降 | 葉80~100枚に対し、実1個を目安に実を間引く。 |
収穫
【柚子の収穫】
・10月~12月
【柚子の果実】
・最初は緑色→少しずつ黄色に変わる→緑色が少し残った頃が収穫適期
完熟していない青い柚子 | 7月から10月ごろに収穫する。 |
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完熟した黄色い色をした柚子 | 10月から1月ごろに収穫する。 |
完熟した柚子 | あまり保存がきかないので、遅くても12月までには収穫する。 |
柚子の活用方法
自分で育てた柚子の木から収穫した柚子を色んな方法で楽しみましょう。生の果実の皮を削って薬味として使ったり、果汁をそのまま絞って使うことが多いですが、他にも色々な使い方があります。
・「柚子茶」…新鮮な柚子をレモンのように輪切りにしてお茶に浮かべる。
・「柚子ジャム」…柚子を丸ごと使った甘酸っぱいジャムは、パンやヨーグルトにぴったり。お湯で溶いてホット柚子湯として飲んだり、他のお菓子への応用も◎。
詳しいレシピはこちら↓
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ユズの種化粧水の最大の魅力は「ペクチン」による保湿力です。食品や化粧品に添加されることも多く高い安全性があります。粘性が高いので肌表面に長くとどまり、潤いを閉じ込めて保湿に効果を発揮。皮膚の乾燥によるかゆみの改善にも役立ちます。【解説】長尾美樹(ミキクリニック院長)
「柚子の育て方」まとめ
「柚子」は柑橘類のなかでも、とくに耐寒性が強く広い地域で栽培が可能です。成長が遅いので実がなるまで時間がかかりますが、お手入れも比較的簡単なので、初心者でも始めやすい果樹といえます。
「柚子」は実も皮も種も、未成熟の柚子も、余すところなく全て使うことができます。料理や調味料、食事の薬味から化粧水まで幅広く、さまざまな用途に利用できますね。
あなたの生活に「柚子」をプラスして四季を感じてみませんか?