シャリっとした食感と、甘くてみずみずしい「梨」。好きな果物ランキングでも上位になるほどの人気の果物です。「梨」を見かけるようになると「もうそろそろ秋なんだな~。」と季節を感じる方も多いのではないでしょうか。
「梨」は、フルーツとしてそのまま食べてもいいですし、料理の材料として、サラダや炒め物、スイーツやジャムなどのさまざまなアレンジができます。そんな美味しいとっても新鮮な「梨」が自宅で育てることができたら、いつもの料理やお菓子作りが楽しくなると思いませんか?
重要なポイントを知ることで、すごく美味しい「梨」が自宅で育てることができます。この記事では「梨の」の育て方、お手入れ方法や失敗しないポイントなどを詳しく解説します!
「梨」の育て方
「梨」は、バラ科ナシ属の落葉性高木です。花は、白い5片で、果皮に斑点のある実らせます。
・梨の花全般→「愛情」
・梨の木→「慰め」「癒し」
梨の歴史
「梨」の歴史は、中国から世界中に広がったといわれています。原産地となる中国から、東に伝わって栽培品種されたものは東洋梨、西に伝わって栽培品種されたものは西洋梨として定着しています。
【分類】
日本梨(和梨) | 中国が原産で、日本に生育する野生種ヤマナシを基本種とする栽培品種群のこと。 |
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西洋梨(洋梨) | 中国から西(ヨーロッパ)に移動して分化したもの。 |
中国梨 | ホクシヤマナシが中国で栽培化された栽培品種のこと。 |
梨は、日本で最も古くから栽培されている果物の1つといわれています。
日本でナシが食べられ始めたのは弥生時代頃とされ、登呂遺跡などから多数食用にされたとされる根拠の種子などが見つかっている。ただし、それ以前の遺跡などからは見つかっていないこと、野生のナシ(山梨)の自生地が人里周辺のみであることなどにより、アジア大陸から人の手によって持ち込まれたと考えられている。
「梨」の種類
日本梨(和梨)
日本梨(和梨)は、品種改良されてたくさんの種類があります。梨には、「赤梨系」と「青梨系」の2つがあり、赤梨系の品種がほとんどです。収穫時期が異なる早生・中生・晩生の種類もあります。
【赤梨系】…幸水・豊水・南水・新高など皮の色が褐色でザラザラしている。果肉は、粒々としていて甘みの強いのが特徴。赤梨は、後から出てくる品種ほど「硬い」「大玉」「日持ちがする」といった特徴がある。
幸水 | 早生 | 果実の大きさは約250~300g程度。果皮の色は、時期や栽培状況によって褐色または黄緑がかった褐色になる。甘さの中にほどよい酸味があり、果汁も豊富。長年、高い人気の品種。豊水・新水とともに、梨の三水とも呼ばれている。 |
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新甘泉 | 早生 | 果重は400g程度。早生品種の中では最も甘みが高く、酸味も少ない。果皮は黄褐色で、果肉は二十世紀系の梨(青梨)を交配しており、赤梨だが青梨特有のシャリシャリした食感がある。 |
新水 | 早生 | 大きさは250~300g程度で若干小ぶり。肉質は柔らかく多汁で、甘さの中にほどよい酸味も含まれていて濃厚な味わい。幸水・豊水とともに、梨の三水とも呼ばれる。 |
愛甘水 | 早生 | 果実の大きさは300~350g程度。梨の中でも早く収穫される早生品種。収穫期は8月上旬から8月中旬までで、幸水と同じくらい甘味があり、しっかりとした歯ざわりがあるのが特徴。 |
秋栄 | 早生 | 果実の大きさは360g程度。果皮は青みがかった赤褐色から熟すにつれ褐色が強くなる。果肉の色は黄みを帯びた乳白色で、柔らかい中に二十世紀特有のシャキシャキ感がある。果汁はとても多くジューシーで酸味はあるが、豊水ほど強くはなく甘みも強い。 |
多摩 | 早生 | 多摩川梨の一品種として知られる。愛甘水の親としても用いられる。早生種としては糖度が高く、肉質は、幸水の性質を受け継いで歯触りが良くジューシーで酸味が少ないのも特徴。 |
南水 | 中生 | やや扁円な形で、大きさは350g程度。糖度が高くて甘みが強く、酸味が少ないのが特徴。果汁が豊富でジューシーな甘みを楽しめる。 |
あきづき | 中生 | 大きさは500g以上。中生種で9月下旬頃から収穫できる。果肉は柔らかく、とてもジューシーで、二十世紀梨を思わせるほど多汁なのが特徴。酸味が少ないので、甘みが強く感じられる。 |
彩玉 | 中生 | 大きさが500g。親の豊水に比べると、肉質はやや粗めでやわらかく、果汁も豊富。酸味が少なくて糖度が高いので、甘みをしっかり感じられる。 |
豊水 | 中生 | 大きさは350~400g程度。果肉は果汁をたっぷり含んでいてジューシー、甘みが強くてやさしい酸味がある。梨特有のシャリシャリとした食感と甘さが楽しめ、日持ちも幸水より少し長め。国内での生産量が多い品種で知名度も高い。幸水・新水とともに、梨の三水とも呼ばれている。 |
稲城 | 中生 | 東京都の稲城市の特産品。果汁が豊富で甘味も多く、シャキッとした食感がある。 |
長十郎 | 中生 | 100年以上前から栽培されている赤梨。大きさは250~300g程度。肉質はややかためで、ほどよい甘みがあり、みずみずしさがあるのが特徴。現在は生産量がわずかだが、根強いファンに愛されている。 |
新高 | 晩生 | 大きさは450~500g。大きく育ったものは1kgほどになることもある。甘みがあって酸味は少なめで、肉質はやわらかめで多汁。幸水・豊水に次いで生産量の多い赤梨。 |
玉秋 | 晩生 | ラグビーボールの様な楕円形で、晩生種の中では、糖度が高く肉質もよい。10月下旬の収穫で日持ちがいいので、常温で年内ぐらい貯蔵が可能。 |
愛宕 | 晩生 | 平均で1㎏ほどにもなる大きさが特徴。大きいものだと2㎏にもなるものもある。果肉はシャキシャキとした食感で、果汁が多く、ほどよい甘さに柔らかい酸味がある。家庭でも、涼しい場所に置いておけば一ヶ月近くは貯蔵が可能。 |
新興 | 晩生 | 大きさは400~600g程度。果肉は柔らかく、果汁が豊富で、甘味とさわやかな酸味が調和している。収穫は10月頃で、生産量はそれほど多くないが、秋から冬にかけて楽しめる品種。 |
晩三吉 | 晩生 | 晩生種の赤梨で、梨全体の1%にも満たない位しか作られていない。大きさは500g~700g程度。果肉はシャリ感があり、多汁で、他の赤梨に比べ酸味が強く、甘みは十分にあるがさっぱりとした後味がある。酸味が苦手な方には少し不向きだが、酸味の中にもきちんと甘みもあり、フルーティーな味わいを楽しむ事ができる。年明けまで流通するなど貯蔵性がとても高い。 |
【青梨系】…二十世紀など果皮が黄緑色でツルツルしている。果肉は、赤梨に比べてなめらかで、さっぱりとした甘みが特徴。
秋麗 | 早生 | やや扁平な形で、大きさは平均350g程度。果肉は白く、歯ざわりは柔らかい。二十世紀のようなシャキシャキ感はあまりないが、とてもジューシで甘い。 |
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なつひめ | 早生 | 果肉は、青梨らしくシャリシャリした歯触りでとてもジューシー。しっかりとした甘さがあり、酸味はあまりない。 |
八雲 | 早生 | 二十世紀梨の品種改良によってできた品種。少し酸味がありますが、みずみずしい。収穫は、8月初旬から中旬。 |
おさゴールド | 中生 | 自家結実性のあるおさ二十世紀の枝変わりから選抜、育成したもの。黒斑病に強く自家結実性を持つのが特徴。ほどよい甘みと酸味がありみずみずしい食感の青梨。 |
ゴールド二十世紀 | 中生 | ゴールド二十世紀は、二十世紀に品質改良をし、黒斑病に抵抗性をもつ変異種を生み出し育成された青梨品種。果実は円形で、果皮は黄緑から黄色で、果肉は黄白色で柔らかくとてもジューシー。黒斑病に強い特徴。 |
菊水 | 中生 | 大きい扁球形で、果皮表面はなめらか。果皮色は黄緑色で全体に果点が散らばっている。果肉は「二十世紀」に似た肉質でやや柔らかく、果汁を多く含み、強い甘みと共にしっかりとした酸味もある。 |
かおり | 中生 | 香りがよくサイズが大きいのが特徴。大きなものは1kgほどになることもある。味はほどよい甘みで酸味は少ない。肉質はやや粗めですが、柔らかくてみずみずしい食感。 |
秋高 | 晩生 | 上品な甘さと、シャリっとした爽やかな口当たりで、りんごのようなすべすべ肌。爽やかな甘みと大きさが特徴。 |
梨の品種は非常に多く、既に栽培していない品種を含めると膨大な種類になります。現在市場で流通する主な品種の糖度と果実の特徴です。
洋梨
洋梨(西洋梨)とは、ヨーロッパ原産のバラ科ナシ属の木になる果実です。大きな特徴はその形で、西洋梨は上が細く、お尻が大きい瓶のような形をしています。粘度が高くて甘く、とても香りがいいです。
ラ・フランス | 大きさは、250~300g程度。収穫後、追熟する。果肉は、多汁でとろけるように柔らかく、高級マスクメロンのような食感で、甘みがあり、やさしい酸味があるのが特徴。しばらく置いて少し柔らかくなったら食べ頃。 |
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パスクラサン | 少しゴツゴツした見た目と、サビの入ったような色合いだが、追熟させることで香り高く、とろけるような食感が生まれる。とてもクリーミーな食感と、溢れ出す果汁がたまらない珍しい西洋梨。 |
中国梨
中国梨とは、中国原産のバラ科ナシ属の木になる果実です。洋梨のような形や和梨のような形もあり、シャリシャリとした食感があります。
鴨梨(ヤーリー) | 洋梨のような形で、大きさは300~350g程度。熟すと果皮の色が黄色くなり特有の甘い香りがする。果肉はやわらかくシャリシャリした食感で、ほどよい甘みとたっぷりの果汁が特徴。 |
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「梨」の育てる準備
夏に、高温多湿になる場所が多い日本での栽培は「日本梨(和梨)」が適しています。「梨」のほとんどの品種は、1本では実がつかない「自家不和合性」という性質を持っています。自分の花粉では結実しないので、他の品種と一緒に植えることが必要です。必ず相性のよい品種を用意し、2品種以上を一緒に栽培することがポイントです。
①「豊水」②「幸水」③「長十郎」④「大原紅」
→2品種を選び栽培すると、よく結実する。
「幸水+新水」「新高+豊水」「新興+新星」「菊+二十世紀」の組み合わせは、結実しないので注意する。
梨の苗木 | 豊水/幸水/長十郎/大原紅など |
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土 | 市販の果樹用培養土/赤玉土/腐葉土/砂など |
害虫対策 | 殺虫殺菌剤など |
おすすめの肥料 | 緩効性化成肥料/粒状肥料/化成肥料など |
あると便利なアイテム | 植木鉢/支柱/ひも/ |
土のこだわり方のポイント
「梨」は、水はけと保水性よいことが大切です。この条件さえ満たせば、土はあまり選ばないので、市販の果樹用培養土を使用しましょう。
鉢植えの場合 | 市販の果樹用培養土に、赤玉土(大粒)5:腐葉土4:砂1の割合で混ぜる。 |
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地植えの場合 | 掘りあげた庭土に対し、赤玉土(小粒)2:腐葉土3の割合で混ぜてよく耕す。 |
植え付け
「梨」の苗を植え付けるの時期は「12月~3月頃」です。市販されているほとんどの苗木は「接ぎ木苗」です。
接ぎ目が目立たず、芽の間隔が狭く細根の多いものを選ぶこと。
・接ぎ目が、こぶになっている。
・樹皮がめくれたもの
うまく育たないことがあるので注意しましょう。
梨の「お手入れ方法」
水やりは1日1回
土の表面が乾いたら水やりのタイミングです。気温が高くなる6月以降は、株が成長し始めるため、1日1回はたっぷりと水やりするようにしましょう。
鉢植えの場合 | 土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷり水やりをする。 |
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地植えの場合 | 基本的に水やりは必要がないが、真夏に雨が振らない日が続く場合には、土の状態を観察し必要に応じて水やりをする。 |
ブドウ、ミカンなどでは水分を制限すると糖度が上がることが知られ、実際の栽培で用いられています。供給される水分が少なくなると細胞は水分不足を感知してよりよく水分を吸収するような働きをします。その一つが細胞内に糖類を蓄積することです。細胞内に糖類が蓄積されると細胞は外部から水を吸収しやすくなります。しかし、水不足の状態ですから十分に水を吸収できませんから糖類は希釈されませんので糖度が上がる、という仕組みです。雨量は水分供給に直接関係しますから、果物の生育全般に大きく影響します。
肥料と追肥
「梨」の肥料と追肥は、1年の間に、「元肥」「追肥」「お礼肥」の3回に分けて与えましょう。
鉢植えの場合 | 植え付ける時の土へ粒状の緩効性化成肥料を混ぜる(12月)。その後は、2ヶ月おきに同じ肥料を追加で与える。 |
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地植えの場合 | 植え付ける時の土に粒状肥料を混ぜる(12月)。3月と、収穫後の9~10月に、それぞれ1同じ肥料を追加する。 |
人工授粉
通常、ハチが花粉を運んだり、風で花粉が飛んで自然に授粉しますが、「梨」の場合は、梨の花をミツバチがあまり好まないため、放っておくと上手く授粉できません。そのため、花を摘んで異なる品種の花にこすりつけるという「人工授粉」が必要になります。
摘果
「梨」を、大きく甘く育てるために「摘果」をしましょう。「摘果」は、2ステップで行います。
1箇所からまとまってなっている複数の実のうち、一番大きくきれいな実を残し、その他の実をすべて取り除く。
全体で葉25枚程度に対し、果実が1つになるように実を落としていく。
袋がけ
「梨」の袋かけは、2回目の摘果が終わったら、できるだけ早めに袋がけを行うことで、果実に付く病気全体の被害の軽減をすることができます。特に、一部の病気では、その効果が高く、袋がけを行わない場合には、大量の農薬を使用する必要が起きてしまいます。
①袋の口を大きく開けて、梨の実にかぶせる。
②軸を中心にして、袋の口をよせる。
③袋についている留め金を軸に巻きつける。
無農薬の場合でも、袋をかけておけば、物理的に虫が入ってこられないので有効。
剪定
・前の年に伸びたよい枝や10cm以下の短い枝は残す。
・伸びすぎた枝や混み合った枝を、先端から2~3芽のところで切る。
・枝の切り口に保護剤を塗る。
害虫対策
「梨」は、雨の多い梅雨時期に病気が発生しやすいので注意しましょう。
赤星病 | 5月以降に発生する。葉に赤褐色の斑点が現れる病気。進行すると葉が枯れ落ちる。幼果にも発生することがあるため、防除が必要。 |
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黒星病 | 5月頃から発生する病気の一種。葉、葉柄、果実に黒い斑点が現れる病気。発病が進むと葉や果実が落ちる。防除が必要。 |
黒斑病 | 雨が多く高温になる梅雨時期に発生しやすい。葉の表面に褐色の病斑が発生する。次第に病斑は黒色に変わり、大きな病斑ができて葉が縮み、下葉から黒く枯れていく。防除が必要。 |
・アブラムシ
・カイガラムシなど
収穫
熟した果実 | 持ち上げると簡単に枝から離れる。 |
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未熟果 | 持ち上げても簡単に取れない。 |
袋をかけた「梨」は、収穫するまで袋をかけたままで、袋ごと収穫しましょう。軸の付け根の部分から軽く引き上げると、簡単に収穫できます。
梨の活用方法
「梨」は、そのままでも美味しく食べれますが、ジャムやケーキなどのスイーツや、サラダやおかず、ソースなどにと幅広く活用できます。
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「梨の育て方」まとめ
「梨」の育て方は、難しいと思われがちですが、ポイントや注意点をおさえれば、自宅でも育てることができます。多少、手はかかりますが、自分で育てた梨で特別な時間を過ごせますね。
①梨の苗木、相性の良い品種を2種類選ぼう。
②土を用意しよう。
③苗を植え付けよう。
④水やりをしよう。
⑤肥料を与えよう。
⑥授粉させよう。
⑦袋をかけよう。
⑧摘果しよう。
⑨剪定をしよう。
⑩害虫対策をしよう。
⑪収穫しよう。
春には「愛情」いっぱいの花が咲き、秋には美味しい「果実」がなり、梨の木のシンボルツリーで「癒し」をくれる、そんな「梨」を育ててみませんか。